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2019-07-29

北海道150年の歴史を学び、未来へつなぐ2days ーフードツーリズムのススメ<前編>

地域ならではの食や食文化を、その土地で楽しむ“フードツーリズム”。欧米を中心に普及し、近年では日本国内でも注目が高まっています。今回は私たちPeace Kitchen HOKKAIDOが主催する『北海道地震復興支援〜千歳をめぐる水と大地・命を感じるプログラム〜アイヌ料理とその精神・北海道150年の食文化と、北海道イタリアンを学ぶ道央千歳1泊2日』の様子を2回にわたってご紹介します。

新たな旅のコンテンツ・フードツーリズムとは

 杜氏から醸造について学び日本酒を味わう酒蔵ツアー、農作業体験で生産物について学ぶ産地ツアーなど、全国各地でユニークなフードツーリズムが実施されているのをご存知の方もいるはず。単純に料理を食べて帰るだけでなく、その土地の気候風土や成り立ち、そこで暮らす人々の想いなどに触れることができるのがフードツーリズムの魅力です。

 中でも“フードツーリズム北海道”は、「世界中の人々と一緒に北海道の食の魅力を再定義(REMIX)し、新たな食文化を創生する」ことをコンセプトにしたフードツーリズム。2018年12月7〜8日には、札幌と千歳市を舞台にしたツアーを開催しました。

生産者と醸造家の二人三脚で生み出されるワイン

 ツアーのスタートを飾るのは、道内でも先発組の『千歳ワイナリー』。新千歳空港から車で15分ほど走ると見えてくる、石造りの蔵が目印です。


 千歳ワイナリーは1988年、山梨県にある中央葡萄酒(株)の第2ワイナリーとして千歳市に設立されました。ケルナーやピノ・ノワールなど、年間3〜4万本のワインを出荷。一般的なブドウのワインは10月に醸造しますが、同ワイナリーでは年に2シーズン(7月と10月)の醸造を行っているのが特徴です。

 その理由は、7月に収穫シーズンを迎えるハスカップのワインを作っているから。ハスカップはアイヌ語で“ハシカプ”と呼ばれ、日本では北海道の一部の地域(勇払原野。苫小牧市や厚真町など)でしか自生していない果実です。ブルーベリーを細長くしたような見た目で、酸味が強いのが特徴。ポリフェノールやビタミン類などをたっぷり含み、「不老長寿の果実」とも呼ばれています。


▲千歳観光連盟土産推奨品、北のハイグレード食品+2015 認定商品のハスカップスイート

 ハスカップワインは、「地場産の原料を使ったワインを作りたい」という地元の声に応えて開発された商品。同ワイナリーの中では、ブドウワインよりも先に製造が始まった歴史あるワインです。飲み口はすっきり爽やか。そして、甘酸っぱくフルーティ。普段あまり飲まない方にもチャレンジしやすいかもしれません。

 一方で、ブドウのワインにも歴史とこだわりが。千歳市は平地で土壌水分が多い上、夏場の天気が崩れやすく、冬は最低気温がマイナス20℃以下になるためブドウ栽培には不向きな地域です。従って、原料は果樹栽培に適した余市町産を使用。30年以上前からワイン用ブドウの生産に取り組んでいる契約農家・木村農園との二人三脚で、美味しいワイン作りに邁進してきました。

 「当時は栽培技術が確立されていなかったこともあり、病気の発生や栽培の難しさから木を切ってしまう農家さんが多かったようです。しかし、木村農園さんは良い木・枝を選抜し続け、その土地に適したブドウ畑を作ることに成功されました」と工場長の青木康宏さんは頷きます。


▲ワインの製造に深く関わる発酵の仕組みを学ぶ

 丹精込めて育てたブドウを最高のワインに仕上げるためには、「酸化させずに、いかに素早く醸造するか」がポイントの一つ。同ワイナリーのスタッフや親交のある料理人、有志などが協力して一気にブドウを収穫し、翌日には樽へ仕込みます。


▲フランス産の樽にワインを仕込むことで、香りが豊かに

 ワイン作りを学んだ後は、「ケルナースパークリングワイン」「ケルナー2016」「ピノ・ノワール2017」「ハスカップスイート」を飲み比べ。原料作りから醸造まで、それぞれが手を抜くことなくこだわって生み出された背景を知ることで、1杯1杯を大切に味わいたくなりました。

北海道中央葡萄酒・千歳ワイナリー

北海道千歳市高台1丁目7番地

【お問い合わせ】0123-27-2460

【営業時間】9:00~17:00

※ 11月~3月まで冬季営業期間は土日祝日の営業なし

すべてのものに敬意をはらう、アイヌの食文化

次に向かったのは、国立公園に指定されている支笏湖。湖のほとりにあるペンネノルデさん(マフィンと自家焙煎珈琲のお店)の店舗をお借りして、アイヌ料理のワークショップを行いました。


▲上野さん(左)、石田さん

 ワークショップの講師役を務めていただいたのは、千歳アイヌ協会の上野亜由美さんとオーガニックキッチンChikyuの石田香織さん。アイヌ料理をそのまま再現するだけでなく、「今の時代を生きているアイヌの人たちが、何を大切にして料理をしているか」を考えたメニューを披露してくれました。

 最初に登場したのは、チェプオハウ(鮭の汁物)。鮭と野菜を塩のみで味付けしたシンプルな料理ですが、鮭のダシがしっかりと出ているので不思議と物足りなさを感じません。

 「アイヌにとってサケは主食であり、シペ(アイヌ語で“本当の食べ物”の意味)です。身を食べるだけでなく、皮は衣服や靴に加工するなど、捨てる部分がありません。アイヌ料理はとてもシンプルで、素材そのものの味を楽しんでいたのだと思います」と上野さん。


▲ヒメマスと根菜のサラダ、厚真町産放牧豚 シケレベ塩麹のロースト、チポロ芋のブルスケッタ

 この他にも、ヒメマスと黒千石の酵素玄米、千歳産有機卵のトルティーヤなど北海道産オーガニック食材を生かした料理が振舞われましたが、どのメニューも最小限の調味料で味付けされており、食材そのものが十分美味しいことに驚かされます。

 「アイヌはサケをカムイチェプ(神の魚)とも呼んで大切にしてきました。網を使わず、鍵モリで自分たちに必要な分だけを獲り、資源や環境を損なうことなく自然と共生しながら暮らしていたんですね。

 私自身はアイヌ民族をルーツにしていますが、今を生きる皆さんと同じような生活もしていますし、アイヌ語も勉強しなければ分かりません。ですが、この極寒の地で暮らしてきたアイヌの文化を紐解いていくと、持続可能な食文化や社会の実現、災害に強い在り方など、様々なヒントが見えてきます」と上野さんは語ります。

 電気やガス、水も“当たり前”のように身近にある日本。私たちは確かに豊かな時代に生きているかもしれませんが、生き物や火・水・土・風など、すべてのものに敬意を払い共生するアイヌの人々の姿勢に、これからの私たちの生き方を問い直されているように感じました。

 アイヌの食文化にたっぷり触れた後は、温泉宿泊施設の休暇村支笏湖へ。ツアー1日目の締めくくりとして、休暇村支配人の川崎孝利さんに『支笏湖温泉学』を、星空研究家の佐藤哲也さんには『星空を楽しむワークショップ』を開催していただきました。

 支笏湖温泉は、とろりとして肌がしっとりする美肌の湯として人気が高く、一年を通して安定した湯量と一定温度の温泉が湧き出ています。川崎支配人によると休暇村では、汲み上げた天然の温泉成分を傷めないためにも温泉を過度に加熱せず、加水も行わないため温泉本来の泉質が楽しめるのだとか。

 冬の支笏湖周辺は寒さが厳しい地域ですが、このシーズンは空気が澄んでいて綺麗な星空を観察することもできます。ツアー当日は満天の星空…とはいかなかったものの、雲の切れ目から見える星たちを童心に返って眺めるひと時。アイヌの人たちも、こんな夜空を眺めていたのだろうか…と、もの思いにふけりながら1日目の行程が終了しました。


▲写真提供:佐藤哲也氏

ペンネノルデ

北海道千歳市支笏湖温泉番外地

【お問い合わせ】0123-25-4020

【営業時間】10:00〜17:00

【定休日】不定休

休暇村 支笏湖

北海道千歳市支笏湖温泉

【お問い合わせ】0123-25-2201

主催:Peace Kitchen HOKKAIDO(事務局:neeth(株))

共催:キリン(株)/協賛:北海道、千歳市

協力:ペンネノルデ、千歳相互観光バス(株)、千歳休暇村、willer(株)、ぐるなび(株)、(株)JTB、料理王国、(一社)日本フードツーリズム協会、支笏湖漁業組合

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